Claudeに、トランプの神経衰弱を作ってもらいました。ひとりで遊ぶタイムアタックと、CPU対戦の2つがあります。
問題は、CPU対戦のほうでした。
完璧に覚えるCPUは、作るのがいちばん簡単でした
神経衰弱のCPUは、プログラムとしては拍子抜けするほど簡単です。めくったカードの場所を配列に入れておく。同じ数字が2枚そろったら、そこを取る。それだけ。
当然、一度見たカードは絶対に忘れません。
こちらがめくったカードも、CPUは見ています。つまり人間が1枚めくるたびに、相手の記憶が増えていく。そんなものと、勝負になるわけがありません。
強くするのが難しいのではなく、弱くするのが難しい。”まるばつ”のときと同じ壁でした。
忘れ方を、3つ用意しました
ただ、まるばつと違って、今回は「弱くする」の中身が何通りもありました。人間が神経衰弱で間違えるとき、間違え方が1種類ではないからです。
結局、こういう3つを入れました。
- うろ覚え — 見たカードを、そもそも覚えられないことがある
- 押し出し — 覚えていられる枚数に上限があり、古いものから消える
- うっかり — 場所を知っているのに、そこを選ばないことがある
難易度ごとの設定は、こうなっています。
覚える うっかり 枚数 やさしい 40% 32% 4 ふつう 65% 18% 8 つよい 95% 4% 20
ひとつ、気に入っていた仕掛けがあります。覚えそこねたとき、そのカードについて前に覚えていたことも消すようにしました。見たせいで、かえって分からなくなる。人間、ありますよね。
6万局、戦わせました
作ったはいいものの、この設定が妥当なのか分かりません。測りました。
同じ規則で動くシミュレータを書いて、記憶が完璧な相手とぶつけます。24枚(12ペア)で、それぞれ6万局。先手と後手は半分ずつです。
取れたペア 勝率 やさしい 1.00 0.1% ふつう 2.32 3.7% つよい 5.14 32.8% 完璧 6.01 44.8%
完璧どうしが44.8%対44.8%(引き分け10.1%)ときれいに左右対称になったので、シミュレータ自体の検算も兼ねています。
ついでに分かったことがひとつ。神経衰弱には、先手の得がほとんどありません。まるばつは先手が圧倒的に有利なゲームでしたが、こちらは何度やっても五分でした。ペアを取ると手番が続くので、最初の1手の価値が薄まるのだと思います。
12枚覚えれば、あとは同じでした
次に、「枚数」だけを動かしてみました。うろ覚えもうっかりも無しにして、覚えていられる枚数の上限だけを変えます。
2枚 … 0.73ペア 4枚 … 2.03 6枚 … 3.48 8枚 … 4.96 10枚 … 5.81 12枚 … 5.98 16枚 … 6.02 24枚 … 6.00
12枚で頭打ちです。そこから先は、何枚覚えられても変わりません。
24枚の盤面で、半分です。考えてみれば当たり前で、半分の位置を知っていれば、残りは消去法になるから。でも、数字で出てくると気持ちのいいものでした。
つまみが、ひとつ仕事をしていませんでした
ここで、自分の設定を見返して、ひやりとしました。
「つよい」の枚数は、20枚です。
いま見たとおり、12枚から上は意味がありません。つまりこの20という数字、実質「無制限」でした。つよいCPUが完璧になりきらないのは、うろ覚え95%とうっかり4%のせいであって、枚数の制限は何の仕事もしていなかった。
3つのつまみを用意したつもりで、いちばん上の難易度では、2つしか動いていなかったわけです。遊んでいるぶんには、まったく気づきませんでした。
いちばん人間くさい仕掛けが、いちばん効きませんでした
もうひとつ、測ってみたものがあります。さっきの「覚えそこねると、前の記憶も消える」という、お気に入りの仕掛けです。
これを外した版と、比べました。
消える(いまの実装) 2.32ペア 消えない(比較用) 2.47ペア
差は0.15ペア。ほとんど何も起きていません。
いちばん凝っていて、いちばん人間らしいと思っていた部分が、いちばん仕事をしていなかった。手応えと、効き目は別物でした。
で、何枚覚えれば勝てるのか
最後に、遊ぶ側の数字を出しておきます。
「覚えたことは忘れない。うっかりもしない。ただし覚えられる枚数には上限がある」——そういう人が、それぞれのCPUに勝てる確率です。
やさしい ふつう つよい 3枚 50% 6% 0% 4枚 82% 24% 3% 5枚 93% 48% 9% 6枚 97% 67% 19% 8枚 99% 87% 42% 10枚 99% 92% 54%
「ふつう」に勝つには、5枚。「つよい」は、10枚覚えても五分です。
ただし、正直に書いておきます。この相手は、同じ数式で動く機械です。本物の人間は、こんなふうに忘れません。古いものから順にきれいに消えたりしないし、疲れたら全部あやふやになります。だから「5枚覚えれば勝てる」は、人間の記憶の話ではなく、この数式の上だけの話です。
そこを承知のうえで、5枚くらいなら覚えられそうな気がしませんか。私はそう思って、さっきから「ふつう」に3連敗しています。
挑んでみてください。→ トランプ神経衰弱
強いAIを弱くする話は、こちらにも。→ 9000戦して0勝でした——まるばつの手加減の話

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