押し入れのファイルに、三十五年前のパンフレットが挟まっていました。
シャープのポケットコンピュータ、PC-1490UII。大学の生協で配っていたものです。たぶん、学生だった私が持って帰りました。
読み返して、自分のサイトのことが書いてあるのに気づきました。
1991年2月に刷られた、新入生向けのパンフレット
裏面の右下に、小さく「1991年2月作成」とあります。
発行はシャープ株式会社と、全国大学生活協同組合連合会の連名。表紙には「入学から卒業まで 4年間保証」という帯が巻いてあります。
つまりこれは、4月に入ってくる新入生に売るために刷られた紙です。私が大学に入ったのが、まさにその1991年でした。
「必携」と書いてありました
表紙のいちばん下に、こうあります。
BASICでプログラミング、手軽に関数計算、関数ポケコンは理工系学生・研究者必携のツールです。
▲ 表紙のいちばん下。「必携」と刷ってあります。
出典:シャープ株式会社/全国大学生活協同組合連合会『ポケットコンピュータ PC-1490UII』パンフレット(1991年2月作成)
必携。
入学したとき、購入を推奨されて、ほぼ全員が持っていました。希望者は、という形でしたが、実際のところ持っていない人を見た記憶がありません。メーカーと大学生協が連名で「必携」と刷っているのだから、そういう売り方だったのだと思います。
値段も、学生に買わせる前提の設計でした。単4電池4本で約70時間動いて、重さ250グラム、厚さ14ミリ。
だから、あのゲームはクラスを超えて流行れた
ここで、最初の記事に書いたことが腑に落ちました。
当時、名前のない洞窟ゲームがクラスを超えて流行った、という話です。どうしてそんなに広がったのか、三十五年ずっと「面白かったから」だと思っていました。
違いました。全員が、同じ機械を持たされていたからです。
機種がばらばらなら、プログラムを書き写しても動きません。学部の新入生が全員おなじPC-1490UIIを持っている世界だったから、誰かが打ち込んだゲームが、そのまま隣のクラスまで届いた。
「必携」が、流行を作っていた。
先輩の作ったソフトが、出荷時に入っていました
もうひとつ、忘れていたものがありました。「電言板」です。
パンフレットには、こうあります。
先輩たちの作ったオリジナルソフトを内蔵。オモシロソフトが手軽に使えて、とっても便利。
大学生協オリジナルのプログラムライブラリ、という扱いでした。学生が書いたプログラムが、メーカーの出荷時に本体へ入っていた。使い方と先輩からのメッセージを載せた冊子まで付いています。
これも、全員が同じ機械を持つ前提だから成り立つ話です。
その一覧が、うちのサイトでした
で、その電言板の収録ソフト一覧を読んで、手が止まりました。
▲ 電言板ソフトの収録一覧。LIFEに「天中殺調べと相性診断」「万年カレンダー」、GAMEに「POCKET INVADER」。
出典:シャープ株式会社/全国大学生活協同組合連合会『ポケットコンピュータ PC-1490UII』パンフレット(1991年2月作成)
- 天中殺調べと相性診断 —— いまの 相性
- 万年カレンダー/日数逆算プログラム —— 日柱の数え方で書いたあれ
- POCKET INVADER —— ネオンブレイカー
- ビンとりゲーム —— 必勝法のあるゲーム。まるばつと同じ系統
- ジェットストリート —— 30秒グランプリ
占いと、暦と、簡単なゲーム。
三十五年前、同じ機械の上で、学生たちが同じものを作っていました。そして三十五年後、私がAIに頼んで並べたものが、ほとんど同じ顔ぶれになっている。
思いついたつもりでいたものは、ひとつもありませんでした。
61,368バイトに、ほらあなは入ります
仕様表に、ずっと知りたかった数字が載っていました。
▲ 仕様表のコンピュータ部。RAM容量の行に「プログラムデータエリア61368バイト」。
出典:シャープ株式会社/全国大学生活協同組合連合会『ポケットコンピュータ PC-1490UII』パンフレット(1991年2月作成)
内蔵RAMは64Kバイト。そのうちプログラムデータエリアが61,368バイトです。
いまのほらあなのHTMLと、並べてみます。
プログラム領域 61,368 バイト ほらあなのHTML 20,597 バイト → 33.6 %
入ります。三分の一で収まる。
正直、入らないと思っていました。いまのブラウザゲームが、三十五年前のポケコンの記憶領域に収まるとは。
ついでに、サイトのアプリ8本ぶんも足してみました。
アプリ8本の合計 196,403 バイト
ポケコン3.2台ぶん。このサイトの中身は、ぜんぶ合わせてもポケコン3台と少しです。
画面のほうは、さすがに差がつきました。
ポケコン 240 × 32 ドット ほらあな 960 × 540 → 67.5 倍
機種の記憶が、三十五年ぶりに動きました
最後に、ひとつ訂正があります。
最初の記事に、私は「シャープのPC-1490U」と書きました。そう記憶していたからです。
でも、手元にあるパンフレットは後継のUIIのもので、刷られたのは私が入学した年の2月です。表紙には「ボクらのUは64KB!」とあり、本体写真の右上には「64KB UNIV.TOOL」と印字されています。
そして—— パンフレットを眺めているうちに、その「64KB」を見た覚えがある気がしてきました。
ここは正直に書いておきます。この記憶は、当てになりません。パンフレットを見たあとに思い出したことなので、本当に覚えていたのか、いま見たものを覚えていたと感じているのか、区別がつきません。
私は少し前に、神経衰弱のCPUに忘れてもらう話を書きました。そこで入れた仕掛けのひとつが、これです。
覚えそこねたとき、そのカードについて前に覚えていたことも消す。見たせいで、かえって分からなくなる。
CPUにわざとやらせたことが、自分の頭で起きていました。
なので、最初の記事はそのままにしておきます。あれはパンフレットを見つける前に書いたものです。出てきた紙のほうを信じて、たぶんUIIだった、とここに書き足しておきます。
その洞窟ゲームは、いまこうなっています。→ ほらあな
最初の記事はこちら。→ 三十五年前にポケコンで流行った、名前のないゲームの話




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